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4.面会(8)

「Mが欲しい。M、結婚してくれ。僕は死にたくない」
二人の看守がピアニストを突き倒した。囚衣をつかみ、床に引きずってドアに向かう。またもや囚衣が破れた。丸裸になったピアニストが看守の手を放れ、開かれたドアの前に仁王立ちになった。
「M、M、結婚してくれ」
プロポーズの熱い言葉がMの耳に突き刺さる。肩を押さえた次長の手をはねのけて前に踏み出す。両足を左右に広げて黒いスカートを捲り上げた。剥き出しになった股間をピアニストに突き出す。
「この身体は全部ピアニストのものよ。きっとピアノを聴きに来る」
静かに抑えた声で言い放つと、ピアニストの肩が安心したように下がった。新任看守がピアニストを羽交い締めにした。主任看守が強引に腰縄を曳いて裸身をドアの外に引きずり出す。逞しく勃起したペニスの上で、腰縄を打たれた細いウエストが無惨に歪んだ。

エレベーターの中でも、獄舎の廊下でも、ピアニストは素っ裸で引きずられながら全身をのけ反らせて暴れ回った。
「Mに会わせろ、もっとMに会っていたい」
掠れきった怒声が静まり返った獄舎にこだました。
「仕方ない、このまま反省房に入れよう。口枷を用意しろ」
主任看守が反省房のドアを開けて新任看守に命じた。房内は一畳ほどの広さしかない。空っぽの室だ。コンクリートの壁面と鉄のドアには身体をぶつけても傷つかないように厚いゴムが張ってある。自殺の恐れがある囚人を懲罰するための特別の独房だ。

「後ろ手錠にしろ」
戻ってきた新任看守に主任看守が命じてピアニストを床に押し倒した。片手の手錠を外して両手を背中にねじ曲げて後ろ手に手錠をかけ直す。喘ぐ鼻を摘み上げて口を開かせ、両端に革紐の付いたゴムの棒を口にくわえさせた。もうピアニストの出す声は言葉にならない。舌を噛む恐れもない。二人の看守に再び立ち上がらされた股間でペニスだけが逞しく屹立していた。散々手こずらせたあげくに今もって支配を拒んでいるようなペニスが看守を嘲笑っているように見える。
「この生意気なペニスにも反省させましょう」
新任看守のいらだった声が響いた。ピアニストの股間を冷え冷えとした手錠が襲う。猛々しく勃起したペニスの根元を鉄の輪が緊縛した。金輪の先に突き出された二個の睾丸が滑稽に見える。短い鎖が股間を通り、もう一方の金輪が後ろ手の手錠と繋ぎ合わされた。直立したペニスが背後から根元を曳かれ、仕方なく亀頭を垂れる。無惨な光景だが本当に反省しているようだからおかしい。二人の看守が大笑いして溜飲を下げた。
「勃起している限り手錠は外れんぞ。反省して、熱を冷ませ」
憎々しい声で新任看守が言い放った。ピアニストを房に入れ、ドアを閉めて錠を下ろした。
天井から落ちるランプの光が直立した裸身を照らし出す。ピアニストは言葉にならぬ声を絶え間なく上げ続けた。腰を狂おしく振って激しく足踏みを繰り返す。勃起したまま下を向いた亀頭を太股が妖しく撫でる。Mを思う官能の炎が股間を焦がした。頭の中が空白になると、背筋を官能が貫いていった。ペニスの先が痙攣し、ゴム張りのドアに白い精液が飛んだ。根元を手錠に繋がれたペニスはまるで少年のように長々と射精を続けた。空白になった頭に大きくMの姿が甦ってくる。涙が溢れて頬を伝った。後ろ手に縛られた裸身が力無くゴム張りの床にひざまずいてしまう。慟哭の声が殷々と獄舎に響き渡った。


Mは刑務所が呼んだ警察官に連れ出され、パトカーに乗せられて市街地の警察署に連行された。四階にある取調室で二人の刑事からたっぷり一時間の間、厳しく説諭された。だが、耳には何も聞こえない。言葉は聞こえても意味をなさなかった。しおらしく下を向いていただけだ。ピアニストの過激すぎる反応だけを反芻していた。協力してもらっただけで、礼も言えずに別れてきた老婆の言葉が甦って耳を掠めた。老婆は尾羽打ち枯らした男の元へ、一切を投げ捨てて帰ったと言ったのだ。だがMは帰るわけにいかない。帰る所もない。ひたすら前に進むしかないのだ。
「まあ、好いた男が死刑囚で、どうしても会いたいという気持ちは分かるよ。でも無茶したらいかん。無茶はだめだ。みんなが迷惑する。分かったかい」
年配の刑事が最後に言った。Mは黙ってうなずく。威嚇のためか、十本の指の指紋を採られた後、身分を証明した運転免許証と煉瓦色のジャケットが返された。指紋を採っても無駄なことだとMは思う。二度の前科と共に、指紋は大切に警察に保管されているはずだった。二人の刑事に送られて警察署の玄関に立つ。遺失物の傘をさして行けと言う刑事の声に首を振り、しのつく雨の中を濡れながら駅に向かった。雨には潮の香りが混ざっていた。まだここは日本海に面した街なのだと、改めて思い知らされたような気分になった。
プロフィール

アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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