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4.クラブ・ペインクリニックの集い(7)

キャリアを積んだナースの話は説得力があります。水と油のように見えたMとチハルの関係も得心できました。僕も祐子も、Mとチハルの双方に憧れ、惹きつけられていたのです。けれど、反論する立場になったMはいません。やはり、僕と祐子が判断するしかないようです。

僕は、大きくうなずいて腰を上げました。
「貴重な話を聞かせてくださって、ありがとうございました。経験話と謙遜していましたが、非常に役立ちました。ありがとうございます」
心の底から礼を言って、深々と頭を下げました。立ち上がったナースが優しく頭を撫でてくれました。肉親の温かさが心に染みます。Mのいない市に帰るのが嫌になってしまいそうです。
祖母の声が、静かに落ちてきました。

「進太。あなたは、辛い道を歩こうとしているようで、心配になるわ。でも、私がいることを忘れないで欲しい。そして、生きることだけが大切だとは思わないで欲しいの。万が一、辛くて苦しくて死にたくなったときは、私に連絡なさい。楽に死ねる方法を教えます。けして、片方に偏ってはだめ。選択肢は幾つでもあるのよ。死もその一つ」
どっきりすることを、ナースは僕に伝えました。慌ててナースを見上げました。穏やかな顔が微笑んでいます。当惑した僕には返事ができません。

「ドアまで送りましょう」
温かな声で僕を促します。しかし、ドアまでは三メートルもありません。並んで三歩歩いてドアを開けます。
立ち止まった僕の肩をナースが片手で抱き、首を曲げてうつむきました。うなじにナースの唇が触れます。伸ばした舌が素肌を這い回ります。くすぐったいような恥ずかしさが込み上げてきて、股間が熱くなりました。ペニスが勃起してくるのが分かります。頬が真っ赤に染まりました。ナースの手が股間に触れます。うなじを這う舌が耳の裏に回りました。もう、全身が火照ってどうしようもありません。
ナースは僕の祖母なのです。孫をなぶるナースも異常だし、祖母になぶられて勃起する僕も異常です。高らかに笑っているMの顔が目に浮かびました。

「分かったでしょう。これが異常なことなの。肉親同士の性は日常ではないわ。でも、他人が行えば、異常も日常も境界があやふやになる。Mの攻め口なのよ。だから、Mは異常者ではない。覚えておきなさい」
ナースが解説して、身を離しました。どこの祖母も、みんな説教好きなのでしょう。しかし、体当たりの説教がナースの面目をあらわしています。僕は黙って頭を下げるだけです。

「行ってらっしゃい」
不思議な挨拶と共に、婦長室のドアが閉まりました。僕は、口の中でさようならと答えました。
十分な成果がありましたが、翻弄されっぱなしの対面でした。全身が疲れ切っています。村木さんにわがままを言って、市まで送ってもらいたい心境になりました。
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アカマル

Author:アカマル
http://prima-m.com/
官能のプリマ全10章
上記サイトにて公開中。

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